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岡山地方裁判所倉敷支部 昭和49年(ヨ)62号 判決

債権者

滝沢興産株式会社

右代表者

滝沢輝治

外三名

右債権者四名代理人

松岡一章

外一名

債務者

柳大式

外一名

主文

一、債権者四名が、各自保証として、債務者ごとに、各金一〇万円あてを供託することを条件として、次の仮処分を命ずる。

(1)  債務者らを別紙目録(一)記載の道路の上にある同目録(二)(イ)及び(ロ)記載の木造工作物並びに同目録(三)及び(四)記載の看板をこの判決の送達並びに右保証供託後七日の期間内に、除去しなければならない。

(2)  債務者らが右期間内に除去をしなかつたときは、債権者者らの申立を受けた岡山地方裁判所倉敷支部執行官は、これを除去することができる。

(3)  執行官は、右除去の執行にあたり、第三者に補助させることができ、除去した物件を岡山県倉敷市玉島一九六二番一所在債権者滝沢産業株式会社管理にかかるボーリング場一階駐車場隅の倉庫内において債権者らに保管させることができる。

(4)  債務者らは、別紙目録(一)記載の道路の通行を妨害する一切の行為をしてはならない。

二、訴訟費用は債務者らの連帯負担する。

事実

(当事者の求める裁判)

第一、債権者ら

一、債務者らは別紙目録(一)記載の道路の上にある同目録(二)記載の木造工作物及び同目録(三)、(四)記載の看板を撤去し、その敷地を明渡せ。

二、債務者らが右撤去作業をしないときは、債権者の申立てた執行官は、第三者をして右撤去作業をさせることができる。

三、前記執行官は、債務者らが前記撤去作業をしなかつたとき、別紙目録(二)記載の木造工作物の用材及び同目録(三)(四)記載の各看板は、倉敷市一九六二番一滝沢産業株式会社所有地にあるボーリング場一階駐車場隅の倉庫において債権者らに保管させることができる。

四、債務者らは別紙目録(一)記載の道路の通行を妨害する一切の行為をしてはならない。

五、前記執行官は本命令の趣旨を公示しなければならない。

第二、債務者ら

債権者らの請求を棄却する。

(当事者の主張)

第一、債務者ら

一、被保全権利。

債権者らは、別紙目録(一)記載の道路について、(1)袋地通行権に基づく妨害排除並びに予防請求権、(2)慣行上の通行権に基づく妨害排除並びに予防請求権、(3)道路舗装構築物の占有権に基づく占有妨害予防請求権、(4)不法行為による被害の回復手段として違法状態除去請求権を有する。

(1) 袋地通行権

(イ) 債権者滝沢興産株式会社(以下滝沢興産と略称)、同滝沢産業株式式会社(以下滝沢産業と略称)は、不動産の管理運営等を目的とし、同株式会社大和工務店(以下大和工務店と略称)は、不動産売買等を目的とする会社であり、同鎌井義博(以下鎌井と略称)は、昭和四九年八月から肩書住所に居住し、川崎製鉄株式会社水島製鉄所に通勤しているものである。

(ロ) 別紙目録(一)記載の道路(以下本件道路と略称)は、申請外井上靖磨呂らがいわゆる水島ニュータウン約九〇〇〇坪(以下特に尺貫法単位を用いることがある)の宅地造成を企画し、宅地造成規制法に基づく岡山県知事の許可を得て着手した際、倉敷市道に通ずる基幹道路として、申請外瀬戸内開発有限会社(代表取締役小川積雄)が、建築基準法四二条により位置指定(昭和四五年一二月二八日指定、道路指定番号昭和四五年第一四〇号)を受けて、同四四年暮から同四五年初めにかけて築造された道路である。

(ハ) 滝沢興産は、同四六年二月、岡山県倉敷市連島町連島二四二四番ほか二五筆(二四二五ないし二四二八番、三四六二番、三四七〇番一、二、三四七一ないし三四七三番、三四七七番一、二、三四七八ないし三四八一番三四八六ないし三四九一番、三四九四番、三五一三及び三五一四番、全部合計面積約三七八一坪)を申請外山本作五郎から買受け、所有権移転登記を経由し、同四八年九月までに宅地に造成し後記(ホ)の売渡部分を除く三三九六坪九三を所有しているが、右宅地造成地から倉敷市道へ通ずるには、本件道路を通行するほかない。すなわち、滝沢興産の右所有地から公道である倉敷市道に通ずるには、囲繞地を通行するほかはないが、本件道路を通行することが滝沢興産にとつて必要で、かつ囲繞地のため損害の最も少ないものであるから、袋地通行権がある。

(ニ) 滝沢産業は、同四九年二月、同所三四二四番ほか七筆(三四七四番、三四七五番一ないし三、三四八二番、三四八四及び三四八五番(合計面積三四九七平方メートル、一〇五七坪九)を買受け、所有権移転登記を経由し、宅地造成を計画中であるが、右土地は、滝沢興産所有地の南側地続きに位置し、公道へ通じるため、本件道路について袋地通行権を有する。

(ホ) 大和工務店は、同四九年九月、滝沢興産から、宅地造成区画地六区画(前示三七八一坪を三三区画に分けたうち、一八、二一、二三、二四、二七、二八号合計三八四坪〇七、全体の中央南西寄り部分)を買受け、所有権移転登記を経由し、建売住宅販売を計画中であるが、公道へ通じるため、本件道路について袋地通行権がある。

(ヘ) 鎌井は、同四六年一二月、井上靖磨呂から同所三四二八番雑種地実測面積一六五平方メートル(五〇坪)を買受け、家屋を新築所有しているが、本件道路西南端から北方約二〇〇メートルに位置し、公道に通じるため本件道路について袋地通行権を有する。

(2) 慣行上の通行権

本件道路は、前記のとおり、同四四年暮から同四五年初めにかけて築造されていたもので、滝沢興産は同四六年二月に、滝沢産業は同四九年二月に、大和工務店は同年九月に、鎌井は同四六年一二月に、それぞれ所有地を取得して以来、本件道路を通行のため常時使用してきたから、慣行に基づく通行権を有する。

(3) 道路舗装構築物についての占有権

滝沢興産は、同四七年九月ころ、本件道路を開設した瀬戸内開発有限会社の承諾を受けて、そのころ路面舗装工事を、周辺の崖崩れに対する防災工事とともに、施工し、その舗装構築物は、厚さ約一五センチメートル、幅員約4ないし7.9メートル、延長約622.65メートルのアスファルト製構築物である。滝沢興産は、右舗装構築物につき占有権を有する。

(4) 不法行為による違法状態除去請求権

債権者らは、本件道路を通行する自由を有するところ、債務者らが、別紙目録(二)記載の各木造工作物及び同目録(三)及び(四)の看板を設置したことは、債権者らを継続的に加害する違法状態を現存させ、かつ、将来にわたつてこの違法状態を存続させる不法行為である。右不法行為による被害の回復手段として、右の違法状態の除去を請求する権利を有する。

二、仮処分の必要性。

(1) 債務者柳大式(以下柳と略称)は、同四七年一二月二八日から同四八年一月一九日にかけて、いわゆる水島ニュータウンの区域内で本件道路の南側にある同所二五五六ないし二五五八番、二五七四番を買受け、同年一月一一日から同年三月六日にかけて、所有権移転登記を経由し、債務者清村勇(以下清村と略称)は、右四筆について、同四九年九月二一日柳との間の売買予約を登記原因とし、同年同月二五日仮登記を経由している。債務者らは、同年同月二一日付内容証明郵便をもつて、滝沢興産に対し、本件道路敷地中に柳所有の四筆の土地が含まれているとして道路使用の中止を求め、実行しないときは、通行止めを行なう旨を通告してきた。

(2) 柳は、かねて、滝沢興産及び申請外中国信販株式会社(鎌井所有地の西側地続きの土地に宅地造成を行う会社)に対し、四筆の土地を高価に買取らせようと企図したが、滝沢興産において、右土地が宅地造成を施行することが困難であり、かつ、柳の申入価格が過大であることから、買入をしなかつた。そこで、債務者らは、四筆と周囲の土地の境界が不分明であることから、本件道路の敷地の一部が四筆の土地に含まれていると口実をもうけ、使用中止を申入れ、買取らせようとしているのである。

(3) 滝沢興産において、債務者らと交渉したところ、一か月一〇〇万円の通行料を支払えとか、やくざ数人を会社に並ばせると脅迫的言辞を用いるので、とりあわないでいたところ、債務者両名は、同年一〇月二五日ころ、本件道路に、別紙目録(二)(イ)の木造工作物及び同目録(三)の看板を設置し、同年同月二六日ころ同目録(四)の看板を設置し、さらに同年一二月一六日同目録(ニ)(ロ)の木造工作物を構築したうえ、本件道路の通行人に対し、通行をとりやめるよう現地で要求している。

(4) 債務者らが木造工作物及び看板を設置した道路部分は、柳の所有地に含まれないものである(別紙目録(二)及び(三)の各物件は、同所三四七六番一ないし三、三四七五番の二、三四二四番地内にある。同目録(四)の物件は同所二五五九番及び二五六〇番の地内にある)。債務者らの道路通行の妨害より、滝沢興産の造成宅地上の建築作業、滝沢産業の宅地造成工事施行、大和工務店の建売住宅の販売、鎌井の自家用自動車による通勤などが不可能となるので、右の損害を避け、急迫な強暴を防ぐため本件仮処分の申請に及んだ。

第二、債務者ら。

一、答弁として、滝沢興産及び滝沢産業の会社目的が不動産の管理運営等であること、柳が債権者ら主張の土地を買受け、主張の登記をしたこと、清村が、主張のころ主張の仮登記を経由したこと、債務者らが主張の内容証明郵便を滝沢興産に発したこと、債務者らが主張の日時、主張の物件を構築・設置したことは認める。

その余の主張事実を争う。

二、債務者らの反駁は、次のとおりである。本件道路の敷地に柳所有の一部が含まれていることは真実であつて、口実ではない。一か月一〇〇万円の通行料を支払えといつた点は、滝沢興産の河野善一から清村に対して通行料を支払う旨の申入をしてきたので、清村が「通行料なら高いぞ。一〇〇万円以下ではだめだ」と冗談半分にいつた程度にすぎない。申請外井上靖磨呂及び同渡辺喜明の両名が、柳を訪問し、「滝沢が買うといつているから売つてやつてくれ」と頼むので、柳は売る話をしたことがあるが、債権者らのいうような脅迫的言辞を用いて、買取りを強要したことはない。債権者らは、本件道路が閉塞されたようにいうが、約2.5ないし3メートルの片側部分は通行が可能であり、八トンダンプ車も通行しているのであつて、道路通行妨害の事実はない。

(疏明)〈略〉

理由

一被保全権利についての債権者らの主張を順次判断する。

(1)  袋地通行権について。

(イ)  債権者滝沢興産株式会社(以下滝沢興産と略称)、同滝沢産業株式会社(以下滝沢産業と略称)が、不動産の管理運営等を目的とする会社であることは、当事者間に争いがなく、〈証拠〉によると、債権者株式会社大和工務店(以下大和工務店と略称)は、不動産売買等を目的とする会社であり、同鎌井義博(以下鎌井と略称)は、昭和四九年八月から肩書住所に居住し、川崎製鉄株式会社水島製鉄所に自家用普通乗用車で通勤しているものであることが一応認められる。

(ロ)  〈証拠〉によると、別紙目録(一)記載の道路(以下本件道路と略称)は、申請外井上靖磨呂、山本作五郎、瀬戸内開発有限会社(代表取締役小川積雄以下瀬戸内開発と略称)らが水島ニュータウン約九〇〇〇坪(以下特に尺貫法を用いることがある)の宅地造成を企画し、宅地造成規制法に基づく岡山県知事の許可を得て着手した際、倉敷市道に通ずる基幹道路として、瀬戸内開発が、建築基準法四二条により位置指定(昭和四五年一二月二八日指定、道路指定番号昭和四五年第一四〇号)を受けて、同四四年暮から同四五年初めにかけて築造された道路であることが一応認められる。

(ハ)  〈証拠〉によると、滝沢興産は、同四六年二月岡山県倉敷市連島町連島二四二四番ほか主張の二五筆(合計面積約三七八一坪)を前示山本作五郎から買受け、所有権移転登記を経由し、同四八年九月までに宅地に造成し、後記(ホ)の売渡部分を除く三三九六坪九三を所有し、右宅地造成地内に築造した各道路(昭和四七年三月二一日許可第一四七号及び同四九年三月一四日許可第一〇七号)を本件道路に接続して倉敷市道に通じる唯一の道路としていること、滝沢興産の右所有地から公道である倉敷市道に通ずるには、もとは、幅員が狭い農道のみが存する山林であつたことから、自動車も通れる道路としては、その目的で築造された本件道路のほかには存しないので、本件道路を通行する必要があり、かつ、囲繞地のため損害の最も少ないものであることを一応認めることができ、右に反する疏明はない。

(ニ)  〈証拠〉によると、滝沢産業は、同四九年二月、同所三四二四番ほか主張の七筆(合計面積三四九七平方メートル)を買受け、所有権移転登記を経由し、宅地造成を計画中であるが、右土地は、滝沢興産所有地の南側地続きに位置し、道路としては、本件道路へ通じる新設道路(同四九年三月一四日指定第一〇七号)が唯一の自動車通行可能のものであること、したがつて、本件道路を通行する必要があり、かつ、囲繞地のため損害の最も少ないものであることを一応認めることができ、右に反する疏明はない。

(ホ)  〈証拠〉によると、大和工務店は、同四九年九月、滝沢興産から、宅地造成区画地のうち主張の六区画(合計面積三八四坪〇七)を買受け、所有権移転登記を経由し、建売住宅販売を計画中であること、公道へ通じるため、本件道路を通行する必要があり、かつ、囲繞地にとつて、それが最も損害の少ないものであることを一応認めることができ、右に反する疏明はない。

(ヘ)  〈証拠〉によると、鎌井は、同四六年一二月、井上靖磨呂から同所三四二八番雑種地実測面積一六五平方メートルを買受け、家屋を新築所有しているが、本件道路、西南端から北方約二〇〇メートルに位置し、公道に通じるため本件道路について袋地通行権を有することが一応認められ、右に反する疏明はない。

(ト)  以上の事実によると、債権者らは、その所有地と公道を結ぶ自動車等の通行可能な道路として、本件道路を通行する必要があり、各土地の囲繞地に新たな道路を開設するよりは、損害の少ないことも明白であるから、袋地通行権があるものと一応解することができる。

(2)  慣行上の通行権。

前示認定とおり、本件道路は、同四四年暮から同四五年初めにかけて築造されていたもので、滝沢興産は同四六年二月に、滝沢産業は同四九年二月に、大和工務店は同年九月に、鎌井は同四六年一二月に、それぞれ所有地を取得したこと、弁論の全趣旨によると本件道路を通行のため常時継続して使用してきたことが明らかであるから、債権者らは、慣行に基づく通行権を有することを一応肯定することができる。

(3)  道路舗装構築物についての占有権。

〈証拠〉によると滝沢興産は、同四七年九月ころ、本件道路を開設した瀬戸内開発有限会社の承諾を受けて、そのころ路面舗装工事を周囲の崖崩れに対する防災工事とともに、施工し、その舗装構築物は、厚さ約一五センチメートル、幅員約四ないし7.9メートル延長約622.65メートルのアスファルト製構築物であること、滝沢興産が舗装路面の補修維持につきこれを管理していることを一応認めることができ、右に反する疏明はない。

(4)  不法行為による違法状態除去請求権。

右の事実関係によると、債権者らは、本件道路について、通行権を有するところ、債務者らが別紙(二)記載の各木造工作物及び同目録(三)及び(四)の看板を設置したことは、当事者間に争いがなく、債務者らがこれを設置した目的について、後記のとおり、何ら正当の事由の主張並びに疏明がなく、弁論の全趣旨によると、もつぱら道路の通行を妨害すること、並びに債権者会社らの事業を妨害することに向けられたものであるから、債権者らに対する継続的な不法行為を構成するものであり、右被害の回復手段として、右違法状態の除去を請求する権利があるものと一応認めることができる。

(5)  以上の次第であるから、債権者らの被保全権利として、本件道路上に設置された別紙目録(二)ないし(四)の各物件を除去する請求権として、前示(1)ないし(4)の各権利に基づく妨害排除並びに予防請求権をいずれも肯認することができるものといわなければならない。

二仮処分の必要性。

(1)  債務者柳大式(以下柳と略称)、同清村勇(以下清村と略称)が主張の日時ころ、主張の土地につき、主張の取引及び登記を経由したこと、債務者らが、主張の日、主張の内容証明郵便を滝沢興産に発したこと、債務者らが主張の目時、主張の物件を構築・設置したことは、当事者間に争いがない。右によると、本件道路の完成後に、債務者らは、主張の土地に関する権利を前主から取得したもので、道路とすることを承諾した地位をも承継しているものである。

(2)  〈証拠〉によると債務者らは、本件の木造工作物及び看板を設置した目的について、滝沢興産との間の土地売渡し交渉が思うとおり進展しないことから、滝沢興産側を刺戟し、買取り交渉を有利に導くことを意図していることがうかがわれる。しかし、債務者らが主張するように本件道路の敷地に柳所有の土地の一部が含まれているとして、その範囲や地番を確定するに足りる疏明がないのみならず、〈証拠〉によると、債務者らが買受けた土地部分は、その主張のように二五七四番ではなく、三四二四番や三四七五番二等の各一部ではないかと疑うに足りる相当の理由がある(三四二三番下池の堤防及び水汲場跡等の古くから異動のない基点の位置及び付近住民である三宅証言等から推定して、右のような疑いは濃いものがある)。

(3)  右の事実関係のもとでは、滝沢興産において、債務者らと土地の売買交渉を成立させ、そのいうなりに所有権移転登記を受けることは、将来に地番をめぐる紛争を生じる虞が大きく、これを承知しないのは、むしろ取引通念上当然の事理に属し、本件道路に障害物件を設置することにより、交渉の進展を期待するがごときは、まことに不合理も甚だしいものがあり、たとえ本件道路内に所有地が一部含まれていたとしても、本件のごとき木造工作物を設置するのは、その目的と手段において権利の濫用と目すべきであり、現地の写真であることは当事者間に争いがなく、〈証拠〉によると河野善一が同四九年一一月二八日から同五〇年一月二九日までの間に撮影したことが認められる〈証拠〉によると、本件道路の幅員全体が閉塞されているのではないこと(弁論の全趣旨によると右は警察・消防関係者からの忠告によるという)は、債務者ら主張のとおりであるとしても、歩車道の区別のない幅員約4ないし7.9メートルの道路の片側を閉塞することが通行権の侵害になることは、明らかであり、債務者らの蒙る損害を避け、急迫な強暴を防ぐため、仮処分の必要があることも明らかである。

三結論

以上の次第であるから、当裁判所は、債権者らの被保全権利及び仮処分の必要性に鑑み、その目的に副う仮処分の内容及び保証金額を定め、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(早瀬正剛)

別紙   目録

(一) 岡山県倉敷市連島町連島三四二四番地から同所二四六八番地までの間に、西南方向から東北方向にわたつて築造された延長622.65メートル、幅員4ないし7.9メートルの舗装道路。

(二)(イ) 右道路の西南端にある三差路の中心付近から、同道路路を東北方向に約19.8メートル進んだ地点までの間(三四七六番一ないし三、三四七五番二、三四二四番の各土地地先)に、同道路の中央付近を縦断して設けられた、約二七本の柱の角材、約二二本の横木の角材、約一五本の斜めの支柱を組合せて造られた、高さ約二メートルの木造工作物。

(ロ) 前記三差路の中心点より約一六メートル東北方向に進んだ地点(三四七六番一ないし三の地先)に、同道路を西北から東南に横切つて設けられた、約一二本の柱の角材に約八本の横木の角材を組合せて造られた、高さ約2.6メートル、幅員約3.4メートルの木造工作物。

(三) 右(ニ)(ロ)の工作物に取りつけられた「此の道路は私有道です。勝手に通行しないで下さい!!所有者・柳55―7190」と記載した縦約二メートル、横約0.9メートルの看板。

(四) 前示(一)記載の道路の同所二五五九番、二五六〇番地先の、輪状(ループ)の道路部分に囲まれた緑地帯(踊り場)の中央辺に立てられた、前示(三)と同じ文言を記載し、縦・横の長さ同一の看板。

図面〈省略〉

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